芸術科学会学会誌「DIVA」2002年夏・3号

「紙のスーベニール」ピープ・ショーカード(のぞきからくり)

2002年6月20日発行 夏目書房
静止画ギャラリー招待作品ページに寄稿

ひとつしかないからすばらしいということではなく、百万個あってもすてきなものはすてきというのが好ましい。かつては広告表現に夢中になってグラフィックデザインの仕事をしていたのですが、一瞬で捨てられていく現実に、わずかでも人がお金をわざわざ支払って手にいれて、眺めたり、送ったり、集める人もいて、しばらくは捨てられないでいる印刷物としてのポストカードやグリーティングカードに関心を持ちました。

イラストレーターに転向してから、色校なしの安いシステムのオフセット印刷でポストカードを多種製作・販売しているうちに、こうじてボローニャのブックフェアで契約をしたドイツの出版社INKOGNITOとグリーティングカード、ポストカードの仕事をするようにもなりました。

かねがね興味のあった紙ものの<おもちゃ絵>。とくに、切り抜いて貼りあわせる簡単な組み立てものや、江戸時代の浮世絵の一つのジャンル<あそび絵>の立版古(たてばんこ)のようなもの。一枚絵としてもグラフィカルで、切り抜くのが惜しいと思わせるような。二次元のイラストレーションの世界が三次元との間を行き来する概念も非常に魅力でした。